エンブレムの製作過程(前半)

はじめに

2006年6月、俺は鳴海フットボールクラブのエンブレムを作成した。下の画像は完成品で、エンブレムが完成したのは、2006年の9月1日である。ここでは、エンブレムを作ったきっかけ、製作過程、感想などを記すことにする。

きっかけ

2005年10月に、Freyrさんに誘われたのが、サッカーをしたきっかけである。彼はなんと鳴海フットボールクラブのキャプテンであったのだ。サッカーをほとんどしたことがないので(小中学校の体育のときちょっとはしたけど)、これには驚いた。結果はものすごく散々であったが、すごく面白かった。2006年6月に、メンバーの一人であるCYANさんが、鳴海フットボールクラブのサイトを立ち上げた。これを知ったとき、俺は何かできないかなと思った。このクラブは名古屋にあるクラブであり、俺は新潟に住んでいるので、簡単には行けない。だけど俺はこのクラブを通して、サッカーがちょっと面白いとはじめて思った。だから俺は、このクラブのために何かできないかと思った。そこで俺は、このサイトのタイトルロゴかバナーを作ろうと立候補した。そしたらCYANさんは『エンブレムを作ってみないか』と提案した。俺は迷わずそれを引き受けた。

エンブレム製作過程

コンセプトは『波と海鳥』である。理由はここでは省略する。波と海鳥を元にすると、メインカラーは青系にするのが一番早い。水鳥や波なら、青や水色がイメージしやすいからである。緑は部分的に入れる(サポートカラー)手もあるが、メインカラーにはなりにくいです。なぜなら緑では、水鳥と波のイメージが十分に表現できないからである。オレンジや赤、黄色は、アクセントカラーの候補になりうる。夕焼けの海なら、オレンジ系が主流になることも考えられるが、それはちょっときついと思う。モノトーンを主流に考えるのはちょっと難しい。今回は補佐的に使うのが賢明かもしれない。

波と水鳥のコンセプトに沿うには、

・ メインカラーは青系(青、水色、シアンなど)や白が考えられる。
・ アクセントは暖色系がいいと思われる。特に黄色は青の補色(反対色)なので視野に入れる。
・ サポートカラー(メインカラーの補佐)として、他の色を挿入する手も あるが、色の数が多くなる恐れもあるので、注意する。

今回はものすごく厄介なことになると思った。波と海鳥が相手なので、直線をメインとしたデザインは考えにくい。またシンメトリーにするのも難しく、アシンメトリーになる確率が高い。曲線がメインでアシンメトリーは、俺にとってはかなり苦手である。

エンブレムを作ることを、英語の先生に言った。先生はサッカーが好きで、この話をしたら盛り上がるかなと思った。そしたら先生は、『柿田君は、すごいものを引き受けてしまいましたね』、と重い口調で言った。俺はこのとき、『えっ!?』と思った。そのあと先生は、エンブレムの重要性について語った。エンブレムというのはチームの魂であること、それを作るからには生半可な気持ちでいてはいけないこと、そのチームの特徴や地域について知ること、エンブレムそのものについて知ること、どれも俺にとってはものすごく応えた。俺は今のままではだめだと思い、エンブレムに関する本を買って勉強した。ちなみに以下の本である。

・ 斉藤健仁、野辺優子著 / 世界のサッカーエンブレム 完全解読ブック / 笊カ庫
・ 斉藤健仁、野辺優子著 / 世界のサッカーエンブレム W杯&南米エディション / 笊カ庫

世界のサッカーエンブレムが、カラーで紹介されている。この本を読んで、いろいろなエンブレムがあるなと思った。国によってもさまざまな特徴がある。たとえばサッカー王国のイギリスは、伝統的な紋章をモチーフにしたエンブレムが多く、中には紋章そのものをエンブレムにするチームもある。ドイツやフランスは、非常にシンプルである特徴があり、イギリスとはぜんぜん違う。ドイツやフランスでは、紋章というのは、権威の代名詞であるイメージが強く、敬遠しているらしい。アメリカや韓国のエンブレムは、企業のロゴっぽいものが多い。

他にも紋章学の本にも当たった。紋章を作るとき、複雑さは避けたほうが良いらしい。あくまでも紋章は自分のチームを伝播するものであるからだ。だから無駄に複雑にするのは好ましくない。西洋の紋章は、色や形の規制がかなり厳しい。そして現在のサッカーのエンブレムは、当然色彩や形状の規制はない。言い換えるとなんでもありの世界になっている。だからこそエンブレムをつくるのは非常に難しいと思う。

俺はこれらの本を読んだとき、紋章よりにしようか、ロゴよりにしようか悩んだ。紋章よりにすると、シンプルで規則的なイメージになるが、単調、没個性的になりやすい。逆にロゴよりにすると、デザインの幅は広がり、個性的なものもできるが、チープな印象を与える恐れもある。紋章とロゴの間で悩んでいた。これはエンブレムを作ろうとしている人なら、おそらくぶち当たる壁になると思われる。

俺は最初、水鳥をメインにすることを考えた。主にこのようなものを書いてみた。(未完成であるが)

完全に水鳥を中心にした構図である。俺はこのとき紋章に強くこだわっていた。はダイの大冒険の『竜の紋章』をイメージしていた。どこまで単純化するかで悩んでいた。単純化しすぎると、何がなんだか分からなくなるし、イラストに近くすると紋章らしくなくなるし。今思うとこのときはシンメトリーに固執していたと思う。アシンメトリーは不得意であったから、逃げたかった心理もあったかもしれない。

そこでFreyrさんとチャットで相談をしたところ、鳥ではなく波をメインにしたらどうかといった意見があった。鳥はどちらかというと脇役にするといいんではないかと言われた。この段階では、俺もつまずいていたので、いったん切り替えてそっち路線にしてみようかと思った。鳴海高校の校章は、波がメインで鳥はアクセントになっているので、参考になった。

ここで路線が大きく入れ替わった。エンブレムの本も以前より徹底的に読んだ。フレームを波っぽい形にした。青系の色で固めた、同一色相配色である。このエンブレムは思ったより反応が良かった。そこで以下のような意見が出た。

・水鳥を大きくする。(大きな種類の水鳥にする。)

最初に使っているのは、コチドリやウミスズメという水鳥をモチーフにした。しかしそれではちょっと迫力がないので、大きな鳥をモチーフにする。(カゴメやアホウドリなど)

・緑を取り入れる。

エンブレムのどこかに緑を入れたいといった要望である。フレームを緑にする方法と海鳥を緑にする方法を考えたが、問題は緑色の選定である。緑はものすごく幅が広い色であるからだ。他にもピンクも結構広いので注意したい。

エンブレムは、ユニフォームなど、プリントアウトする可能性が高いので、光でしか表現できない緑を使うのはNGである。なぜなら印刷したときに、その緑は違う緑になってしまうから。

ものすごくギラギラした明度も彩度も大きい緑である。パソコンで緑といったら、この緑が真っ先に思いつくであろう。プレせーテーションでも、このような緑の乱用がたくさん目に付く。『緑は自然のイメージがあるし』と思っている方は注意したい、自然の緑は彩度がここまで高くはない。以下のように思ったほど鮮やかではない。(さらにここで記憶色についても語れるがここではやめておく。)

緑は『黄緑〜青緑』と色相の幅が広い。どの色相を用いるかでもがらっとイメージが変わる。結局はここでは普通の緑(黄緑でも青緑でもない緑)になった。


8月初旬〜中旬、俺は函館に帰省したので、しばらくの間エンブレム作成は中止となった。なぜなら地元には、イラストレータのソフトがないと思っていたからだ。しかし函館に着いてしばらくした後、イラストレーターが実家のパソコンにあった。(どうやら妹が持っていたらしい)そのためエンブレム製作を再開した。鳥の種類を変えて、緑を取り入れ、下のようなエンブレムを作成した。

このとき、エンブレムに動きがほしいといった意見があった。具体的には、

・ 鳥を大きくして、フレームから少しはみ出るようにする。
・ 波は三つとも同じ大きさにするのではなく、大きさに変化をつけたらどうか。(左から一番目の波は比較的小さくして、二番目と三番目の波は大きくするなど。)
・ 水色ではなく、もっと濃い色にしたい。(エンブレムははっきりした色のほうが良いから。)

水鳥を枠の上部に出すということは、枠の上部の複雑さが増してしまう。はたしてどのようにバランスをとったら良いか?といった悩みがあった。また鳥を枠からはみ出して、波の大きさに変化をつけると、エンブレムの対称性が著しく損なってしまう。これだとバランスをとるのが非常に難しくなってしまう。これが一番ハードであった。

そしてついにこの画像がエンブレムとなった。これが完成したのは9月1日であった。まずは鳥の一部をフレーム上部から、はみ出すので、エンブレムのフレーム上部の形状を単純化した。次に鳥は左寄りに配置して、右側は波を大きくすることによって、左右のバランスをとった。波をどのような形にしようかかなり悩んだ。この完成の形を思い出したとき、俺は自分でも驚いてしまい、Freyrさんに電話をかけてしまった。

感想

エンブレムは甘く見てはいけない。その地域やチームの特性を把握するのはもちろんのこと、エンブレムの実例をたくさん見ないといけないと思った。『紋章に近くすると、個性がなくなるし、ロゴに近くするとチープになってしまう』といったジレンマは、エンブレムを作成するときに衝突する壁のひとつであると考えた。どっちにするかはっきりすれば、やりやすいと思った。

俺がチームプレイスポーツにかかわることはめったにない。なぜなら俺はチームプレイスポーツは、あまり好きではないからだ。それについてちょっと書いてみる。俺のことをちょっとでも知っていればわかるけど、俺は運動はかなり苦手である。水泳とスキーはできるけど、それ以外はものすごくひどい。

この傾向は小学校のときからずっとそうであった。俺は体育に関して良い思い出はほとんどない。(例外もある。)正直言うと『魔の時間』だと思っていた。とくにチームプレイスポーツのときは、非常に憂鬱であった。なぜなら俺が入ると、戦力が弱くなることは確定しているからだ。それだからみんなにかなり敬遠されていたし、『役立たず』とか陰口を叩かれることもあった。この状況だとぜんぜんやる気が起こらなかったし、到底好きにはなれなかった。だから俺は、チームプレイスポーツは積極的にやろうとはしない。なぜならどうせ敬遠されたり、陰口叩かれたりするからである。そんなつまらないものにわざわざ突っ込むことは俺はしない。(ただしこれらのことがなかったら、得られなかったこともたくさんあると思う。)俺がFreyrにサッカーに誘われたときも、一瞬は不安であった。しかしその不安は練習が始まった瞬間あっという間に消えた。正直言うと、今までの中で一番面白かった。俺はこのチームのために何かしたくなって、エンブレム作りに立候補したわけである。そしてそのような形で関われて非常に良かった。これからも俺は鳴海フットボールクラブに関わっていくと思う。

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