6 アースガルドの城壁

この話はオーディンらが世界を作り、アースガルドに定住して間もないころの話である。

アースガルドには、巨人やトロルから守るための柵があったが、木柵であった。守りが無いよりはマシであるが、防御力は小さい。神々はもっと頑丈な城壁が欲しかった。

ある時一人の石工がやってきて、神々にこう言った。「私がアースガルドを守るための城壁を作りましょう」と。神々は「賛成」と口々に言ったが、まだ慎重な様子だ。

まず、完成するには一年半かかるらしい。これにはみんな納得した。しかし、報酬として太陽と月、フレイヤが欲しいと言い出した。

「太陽と月はともかく、フレイヤをやるなんて言語道断だ。」と神々は憤慨した。フレイヤといえば、女神の中でも最も美しい女神だ。神々は「城壁は欲しい、フレイヤがあんな奴の嫁になるなんていや。」と思った。早速会議が開かれたが、中々いい案が出てこない。(ちなみにこの時、トールはいなかった。)そこでロキが口を開いた。(なんか、ロクなことにならないぞ。)

他の神々は、6ヶ月だとどんなに良くても城壁の半分しか手に入れることが出来ないと愚痴っていた。しかしロキはこう囁いた。

―――「石工の報酬はゼロだけど、俺たちは城壁の半分をゲットできるんだよ。」

なな、なんて発想。これはフレイヤをダシに、彼を働かせるだけ働かして、ピタ一文払わなくて済む方法なのだ。神々はその条件を石工に伝えると、石工は承諾した。しかし彼は、三つの条件を要求した。一つ目は、石を引っ張るのに、スヴァジルファリと呼ばれる馬をつかわしてもらいたいこと。二つ目は、トールが帰ってきても、不安無く働けるようにすること。三つ目はこの契約にしっかりとした保証人をたてること。以上の要求は、認められた。

そして作業は始まった。一日目から、彼は城壁の建築にとりかかった。神々は彼の仕事振りに驚いた。馬の引く岩の大きさが半端でなく、彼の技術も素晴らしく、作業がスムーズに進行している。彼は朝早く起き、夜遅くまで働いた。城壁の工事は大いに進んで、トロルや巨人が攻撃できないほど、城壁は高く頑丈に作られていた。そしてタイムリミットの三日前には、城壁の門を作り始めていた。

これは大変。このまま行くと、月も太陽もフレイヤも全部あの男のものになってしまう。神々はみんな集まって会議を開いた。フレイヤは「あんな奴の嫁になるなんて絶対いや。」と泣きそうだった。「みんな、このままだと約束の褒美はあいつの物になってしまう。なんとしてでも約束を破らなくては。」とオーディンが言った。(おいおい、約束だろ。)

非難の視線はロキに集まった。「ロキ、お前が悪いんだぞ。」と口々に非難した。しかしロキは「俺だけのせいじゃない。みんな賛成したじゃないか。」と言った。

しかしオーディンは、「あんな奴がフレイヤと結婚したら、お前をぶっ殺してやる。しかも、この世のものとは思えないほどの醜い死に方でな。」とロキを脅した。彼は努力すると誓った。

同じ晩に鍛冶屋が馬のスヴァジルファリを連れて、石を取りに出かけた。ロキはめちゃくちゃ美しい牝馬に変身した。スヴァルファリは、美しい牝馬に一目ぼれし、手綱を引きちぎり、牝馬を追いかけた。牝馬は森に逃げ、石工は馬を捕まえるのに苦労した。馬は一晩中駆け回って、工事はストップした。翌日も同様であった。もう、リミットは一日しかない。

石工は怒りだしてついに正体を表した。なんと石工は巨人であった!!神々は石工の正体が巨人であることをはっきり知ると、トールを呼んだ。トールのミョルニル(ハンマー)が巨人の頭蓋骨を粉砕した。こうして神々はタダで素晴らしい城壁を手に入れた。

ちなみにスヴァジルファリと牝馬(ロキ)は戯れあっていた。数日後ロキは子供を生んだ。子供は灰色で足が八本あり、この世でもっとも優れた馬なのだ。この馬にオーディンが乗ると、どんなに地形が悪い場所でもスムーズに走った。海でも空でも、普通の平地と同じ速度で走れた。この馬を神々はスレイプニルと呼んだ。

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