7 詩の蜜酒

アース神族とヴァン神族が、平和協定を結んだとき、一つの契約をした。両者は坪の両側に並んで「もう、争いはしない」と誓いの言葉を述べた。その後、つぼの中に唾を吐きこんだ。

神々はこの契約のしるしに生命を与え、クヴァシールという男を作り出した。クヴァシールはめちゃくちゃ賢く、得意分野は詩であった。

しかし彼はフヤラールとガラールと言う小人に殺されてしまう。彼を人気の無い場所に誘い出し、ブスッと殺した。彼の血をソンとボドンという二つの容器に入れ、余った血はオドレリールという鍋に入れた。小人たちは、クヴァシールの血に蜜を混ぜて、蜜酒をこしらえた。

小人たちは神々にこう言った―――クヴァシールは知識に窒息して死んだ、と。

或る日小人たちは、ギリングという巨人を連れて、魚釣りに行った。しかし小人たちは、舟を暗礁の上に乗り上げさせたため、舟は転覆した。巨人は泳げなかったため、溺れ死んだ。小人たちは、とっとと舟を修理して、陸に戻った。

このことをギリングの妻に話すと、彼女は一日中号泣していた。フヤラールは、彼女に言った―――気分転換に海でも見ませんか、と。彼女はいい考えだと思い、早速海に行こうとした。しかし彼女が外に出た瞬間、屋根の上にいたガラールは、彼女の頭の上に石臼を落とした。もちろん彼女は即死。(大量殺人だなこりゃ。)

ギリングの息子スッツングは、この小人たちを野放しにしなかった。「俺の両親を殺したな。ぶっ殺してやる。」と小人たちを捕まえ、海に沈めようとした。小人たちは「蜜酒をあげるから、命だけは助けて。」と泣きながら命乞いした。スッツングは蜜酒を手に入れた。蜜酒はフニット山に隠し、娘のグングロッドが蜜酒を見張っていた。

やがて蜜酒のうわさが広まり、知的好奇心が強いオーディンは、蜜酒のありかを探索した。途中、9人の農民に会ったが、農民は干草を刈っていた。しかし、カマの切れ味が良くないので、作業は難航していた。これを見たオーディンは、自分の帯革から砥石を抜き出し、カマを研いだ。切れ味が見違えるほど良くなったので、農民らは感動した。農民らは砥石を買いたがっていた。

そこでオーディンは、砥石を高く投げ上げた。農民たちは「この砥石は俺のものだ」と争って砥石をつかもうとして、研ぎ澄まされた大鎌で、互いの首を切ってしまった。

その夜、オーディンはスッツングの兄弟バウギの家に泊まった。バウギは「あなたの名前は?」とオーディンに聞いたので、オーディンはヴォルウェルクと名乗った。バウギは言った、「この前変なことがあったんだ。うちの農民9人が、互いに殺しあってしまった。早く新しい農民を見つけないといけないな。」と。

もちろん殺したのは、オーディンだ。これはチャンスだと思い、ヴォルウェルクは「私が九人分の仕事を引き受けるから、蜜酒を一口だけ飲ませてくれ。」と頼んだ。バウギは、「蜜酒はアニキが隠し持っている。そのありかは全く分からない。私がアニキになんとか一口飲めるように頼んでみよう。」と言った。

ヴォルウェルクは頑張った。夏中、バウギのために9人分働いた。さて、夏が終わったときにヴォルウェルクは謝礼を求めた。しかしスッツングは、「冗談じゃない。あんな素晴らしい酒を他人に飲ませるなんて。」と怒った。「密酒はどこに隠してあるんだ。」とバウギはスッツングに質問した。スッツングは答えた―――フニット山に隠してあるんだよ。、と。

もっと怒ったのはヴォルウェルクだ。「私の報酬はどうなるんだ!!」しかしこんなことで、あきらめるヴォルウェルクではない。「話し合いで駄目なら、計略で蜜酒を奪えばいいんだ。バウギも協力しろ。」とヴォルウェルクは言った。

ヴォルウェルクは一本の錐(きり)を、自分の帯革から抜き出した。(四次元ポケットみたいだな)バウギに「これで山に穴を開けてくれ」と頼んだ。バウギは錐を用いて山に穴を開けた。

ヴォルウェルクは蛇に変身して、穴の中にもぐりこんだ。バウギは錐で、彼を刺そうとしたが、蛇のスピードにはかなわなかった。

そして、ついに蜜酒を見つけた。しかし、スッツングの娘であるグンロッドが蜜酒を見張っている。オーディンは得意のナンパで、彼女のハートを射止めた。彼女とオーディンはラブラブの関係になり、三夜寝床を共にした。すっかり彼女はオーディンが好きになり、手厚くもてなした。

ついに彼女は恋に負けてしまい、オーディンに「蜜酒を飲んでいいわよ。誰もが味わったことの無い幸せをあなたにあげるわ。ただし、三口・だ・け・ね。」と言った。

ついにチャンスがやってきた。密酒は全部で三つある。オーディンは最初の一口でオドレリールを空にし、立て続けにボドンとソンを飲み干したので、スッツングの蜜酒はぜ〜〜んぶオーディンの腹の中に入った。

それから鷲に姿を変えると、力の限りの速さで飛んだ。それに気づいたスッツングは鷹に変身して、オーディンを追いかけた。神々はオーディンが飛んでくるのを見たので、持っている限りの桶を中庭に置いた。オーディンはアースガルズの中まで飛んでくると、蜜酒を桶の中に吐き出した。

ついに神々は蜜酒をゲットできた。しかし、スッツングがすぐ後ろに迫ってきて、オーディンは攻撃されそうになったので、飛行のバランスを崩し、少量の蜜酒を桶の外にこぼしてしまった。

オーディンは蜜酒を神々や吟遊詩人に与えた。こぼれた蜜酒は、三流の詩人でも飲めるため、「えせ詩人の分け前」と呼ばれている。

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