25 バルドルの死〜後半

神々はヘズとロキを睨んだ。しかしアースガルドは神聖な土地であるから、誰も彼らを復讐することができない。神々は言葉よりも涙が先にこみ上げてきて、誰もが自分の悲しみを、言葉に出すことができなかった。自分たちの悲しみがどれだけ大きいか、語り合うことすらできなかったのである。天地創造以来、最大の不幸といっても過言ではない。ヘズはボウスによって殺されてしまう。

しばらくして、神々は正気に戻った。フリッグは口を開いた―――神々の中で、どなたか冥府に行って、バルドルを見つけ出して、私の息子が生き返るように、ヘルに身代金を差し出すものはいませんか?と。

立候補したのは、オーディンの息子ヘルモーズだ。彼は勇気があり、俊敏のヘルモーズと呼ばれていた。彼はオーディンの馬スレイプニルに乗り、ニブルヘイムに向かった。冥府に行くことは、神々といえども、容易なことではない。

残りの神々は、バルドルの葬式の準備をした。バルドルの死体を海辺まで運んだ。バルドルの船フリングホル(リングホルン)を海に浮かべて、それを火葬台にしようとした。しかし船はものすごく重いため、神々は船を運ぶことが出来なかった。

そこで神々は巨人を呼んだ。彼女の名はヒュロッキン、毒蛇を手綱にして、狼にまたがっていた。彼女は狼から降りた。彼女はすぐに船を引いたが、あまりに扱いが乱暴であった。それを見たトールは激怒して、ミョルニルを振りかざしたが、他の神がなだめたので、トールの怒りは沈んだ。

バルドルの屍が船の上に運ばれるのを見ると、バルドルの妻ナンナの心臓は悲しみのあまり張り裂けた。彼女の屍はバルドルの隣に安置された。オーディンは火葬品として、黄金の腕輪ドラウプニルをバルドルの屍にのせた。バルドルの馬は殺され、薪の上に乗せられた。すると火がかけられ、船は海を漂い、はるか彼方へ流れた。

トールはバルドルを祝福していた。しかし、リトルという小人が、彼の足にもぐりこんだ。 トールは足で小人を蹴飛ばし、小人は火の中に落ちた。(何のために出たんだ。)この火葬には、非常に多くの人が集まった。神々も、小人も、巨人も、人間も、トロルも、みんな黙祷を捧げていた。


一方、ヘルモードは・・・

冥府までの道は険しい。9日間ヘルモードは馬に乗り、ニヴルヘイムにたどり着き、フヴェルゲルミルの泉を過ぎ、光り輝くギャラールの橋にたどり着いた。そこにはモードグズが座って、橋の番をしていた。

モードグズ 「あなたの名前は?」

ヘルモード 「私はヘルモード、オーディンの息子です。」

モードグズ 「あなたは生きていますね。なぜ、こんなところに・・・?」

ヘルモード 「バルドルを探しに行くのです。」

モードグズ 「バルドルは冥府ヘルに行きました。北へ向かって下りれば、ヘルに着くでしょう。」

そこでヘルモードは、そういわれると馬を走らせて、とうとうヘルの館に着いた。しかしヘルの館エリュードニルは、高い城壁と門に囲まれ、普通なら入る事は不可能だ。するとヘルモードは、門の後ろのほうからスレイプニルを走らせ、そしてその門を見事に飛び越えた。広間に行くとヘルが王座に座っていた。ヘルモードは、ヘルにバルドルを返して欲しいと頼んだ。

ヘルモード 「私はヘルモード。私の兄弟のバルドルを返して欲しい。バルドルがいなくなって、みんな泣いている。」

ヘル 「そんなにバルドルはみんなに愛されていたのですか?私には信じがたいです。本当にバルドルが愛されているかどうか、試してみましょう。世界中のものが、バルドルの死を悲しんで泣くなら、彼をアースガルドに帰しましょう。」

バルドルは、オーディンにドラウプニルの腕輪を託した。ナンナは、フリッグに布と贈り物を、彼女の侍女フラーに指輪を託した。ヘルモードは、バルドル夫婦の託し物を受け取り、アースガルドに戻った。

可能性は極めて薄いが、バルドルが生き返るかもしれない。神々は全世界に使いを出して、すべての者に、バルドルを呼び戻すために泣いてくれと頼んだ。人間も動物も、巨人も小人も、妖精も暗黒妖精も、動物も植物も、鉱物も病気も、みんなみんなバルドルのために泣いた。

バルドルが生き返る・・・神々はみんなそう思っていた。しかし、セックという女巨人が洞穴の中に座っていた。バルドルのために泣いてくれと神々は頼むと、彼女は答えた。

私はバルドルのために
乾いた涙しか流さない

生きていたって 死んでいたって
私にとっては 同じ存在

ああヘルよ
持てるものを放すなよ

実はこの巨人の正体はロキであった。ロキは二重にバルドルを殺害したことになる。

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