今日は楽しい大宴会。会場は海神エーギルの館。この宴会はめちゃくちゃ大宴会なので、ほとんどの神が出席していました。妖精もたくさんいて、みんなにぎわっています。ただムキムキ筋肉のトールは、東方に出かけていて留守でした。もちろんロキもいました。
ロキは天邪鬼というか、ひねくれものというか、そういう性格なので、神々が楽しくにぎわっている様子をみると、不愉快で不愉快でたまりません。
フィマフェングとエルディルは、神々にチヤホヤされていました。二人は海神エーギルの従者です。「てめぇら、神々にちやほやされやがって。」とロキはムカついて、フィマフェングをブスっと殺してしまいます。
これには神々も怒り、ロキを宴席から追放します。それからまた神々は飲みなおしました。(人が死んだのに・・・)ロキは宴席に引き返そうとしたが、宴席の門でエルディルにバッタリ会いました。
さぁ、ここからロキの毒舌が炸裂します。Are you ready?
ロキ
「動くな、エルディル。神々は宴席で何を話しているんだ。」
エルディル
「神々は武器や武勇伝のことについて話しています。誰一人たりとも、あなたのことを良くは言っていませんよ。」
ロキ
「なに〜〜、こうなったら俺様が酒席を台無しにしてやる。」
エルディル
「いけませんよ。そんなことしちゃ。」
ロキ
「良い子ぶってんじゃねーよ。俺様の悪口にかなう奴がどこにいる?」
それからロキは広間の中に入った。しかしみんなは不愉快な様子だ。誰もロキに話しかけようとしない。
ロキ
「このロプト様(ロキの別名)が神々の宴席にやってきたぞ。さあとっとと椅子と席と酒を用意しろ。」
ブラギ
「お前のための酒はない。」
ロキ
「ちっ、いなくなって欲しいんだな。オーディン、昔俺たちは血を混ぜた仲だったよな。血の誓いは絶対だぞ。」
オーディン
「・・・・。ヴィーザル、狼の父ロキに酒席をつくってやってくれ。ロキ、悪口はほどほどにな。」
ロキ
「アース神に栄えあれ。アース女神に栄えあれ。全ての神に栄えあれ。…そこにいるブラギを除いて。」
ブラギ
「剣と馬と腕輪をプレゼントしよう。だから神々に矛先を向けないようにな。」
ロキ
「なにぃ矛先を向けないでだとぉ。ナマ言ってんじゃねぇ。てめえ女々しいんだよ、臆病者で、戦に出ることもできないくせによぉ。」
ブラギ
「ここがエーギルの広間じゃなかったら、お前の首など簡単にすりつぶしてやる。」
ロキ
「ああぁん?女々しいてめぇにそんなことできるのか?そんなに腹が立つなら、剣で語ろうぜ剣で。」
やばいと思ったイズンが割り込む。
イズン
「ブラギ、神聖なエーギルの広間で、ロキの悪口を言うのはやめなさい。それにロキの悪口を言ったって血圧が上がるだけよ。」
ロキ
「黙れ、イズン。お前はあらゆる女の中で一番いやらしい女だ。お前の兄を殺した男を、きれいに磨いたその腕で抱いたんだからな。恥だと思わないのか?」
イズン
「まあまあ、ロキの悪口を言うのはよしましょう。私は麦酒で陽気になったブラギを、なだめたいだけなのよ。殺し合いになるのは嫌ですから。」
ゲフィオン
「何で言い争いなんかするの?ロキの悪口なんて、アースガルド名物なのに。」
ロキ
「お前は引っ込んでいろ。お前、男を誘惑したんだろう。察しは着いているんだぜ。首飾りをくれた生白い男に、膝まくらしたんだろう。」
オーディン
「ロキ、ゲフィオンはキレると怖いんだぞ。」
ロキ
「なんだよオーディン。人間たちに勝利を公平に分けてやることも出来ないくせに。戦いの神だろ。なっさけないな。なんで臆病者に勝利を与えるんだ。」
オーディン
「そんな痛いことを・・・じゃあわしも言うぜ。八年もの間、地下で乳絞り女になって、その上子供までこしらえたじゃないか。お前のオカマぶりには失望したぞ。」
ロキ
「アンタこそオカマちゃんじゃん。サームス島で、魔法を使ったというウワサを聞いたことがあるぞ。魔女の格好をして人間たちのところへ行ったじゃないか。魔法なんて女のやるものだ。男は剣だよ剣。てめぇそれでも男か?」
フリッグ
「まあまあ、そんなに目くじら立てなくても。過ぎたことは過ぎたこととして水に流しましょうよ。」
ロキ
「ほぉーフリッグさん。お前は男狂いだったな。オーディンの妻のくせに、ヴィリとヴェーイ(オーディンの兄弟)の二人を抱いたことがあるらしいな。」
フリッグ
「なな・なんてことを!!ああ、私の息子バルドルが居てくれたら・・・」
ロキ
「バルドルをネタにするなんてずるいねぇ。俺様の毒舌をもっと聞きたいようだな。バルドルを殺したのは俺様だぜ。俺が殺したんだよ俺が。」
フレイヤ
「あんた狂っていない?あんな恐ろしい事件を語るなんて。あんたの運命はお見通しよ。」
ロキ
「フレイヤには言いたいことがいっぱいあるぜ。ここに居る神や妖精はみ〜〜んなお前の恋人じゃないか。いやらしいやつめ。」
フレイヤ
「うそばっかり。あんた、ちょっとは言葉を選びなさいよ。あんたなんてすぐに追い出されるわよ。」
ロキ
「魔女の癖に生意気だ。お前がアニキと何をしたのか、みんなの前で言うぞ。」
ニヨルド
「まあフレイヤ抑えなさい。一人の女が夫や情夫、またその二人と一緒に寝たって、たいしたことはないだろ。」
ロキ
「ずいぶん大言吐くじゃねーか。このトイレ野郎が。てめえは人質の身だろ。(グサッ)人質として送られたとき、ヒュミルの娘たちの便器代わりになったじゃないか。(ザクッ)」
ニヨルド
「そう人質としての道は遠かった。だが私にも良いことがあった。私はアースガルドのプリンスであるフレイをもうけたのだ。」
ロキ
「ほぉ、フレイを出すのか?あんたもやるネ。だけどフレイは、お前とお前の妹の間に出来た子供じゃねえか。近親相姦でこしらえちゃって。」
チュール
「近親相姦なんて大したこと無い。フレイは立派な英雄じゃないか。そんな彼をお前は批判するのか。」
ロキ
「黙れチュール、お前は二者を上手くとりなすことができなかったくせに。フェンリルが噛み切ったお前の右腕を思い出すよ。」
チュール
「俺は右腕を、お前はフェンリルを失ったから、おあいこだ。お前の息子フェンリルも、縛られたままラグナロクを待たねばならんとは、お気の毒だねぇ。」
ロキ
「な、なにー。お前の女房は俺と寝て子供をこしらえたこともあるんだぜ。賠償金もとれなかったお前はみじめな奴だな。」
フレイ
「いい加減にしろ。口を慎まないと、お前もフェンリルと同じように捕縛されるぞ。」
ロキ
「お前はギュミルの娘を、金で買った男じゃないか。お前の恋は所詮そんなレベルなのか。ムスペルの子供が、暗い森(ミョルクヴィズ)を越えて襲ってきたら、お前はどうするんだ?恋のために大切な剣を失いやがって。」
フレイの後ろからひとりの神があらわれた…。
ビュグヴィル
「わしがイングナ・フレイ(フレイ)のように身分が高かったら、お前のようなカラス野郎なんてバラバラにしてやるのに。」
ロキ
「てめぇのようなチビは全然覚えてねーな。お前は誰だ?」
ビュグヴィル
「わしの名はビュルヴィルだ。神々はわしのことを素早いと認めているぞ。」
ロキ
「食事の世話もロクに出来ない奴が何を言う?それに戦のときはどこにいた?どうせ藁の中に隠れてたんだろ。まったく、度胸のない奴め。」
ヘイムダル
「ロキ、悪酔いもたいがいにしろ。」
ロキ
「おいおいヘイムダルちゃん、見張りなんて地味な仕事はやめて、パーッとはじけようぜ。まだこんな連中の肩を持つのか?」
ヘイムダル
「俺はこの仕事が一番好きだ。」
ロキ
「つまんない奴だなぁ。」
スカジ
「ロキー、あんたホントに元気が良いわねぇ。だけど、もう年貢の納め時よ。もうすぐ神々はあんたを岩に縛り付けちまうんだから。」
ロキ
「そんなこと知るか!!神々がお前の父シアチを殺したとき、俺は一部始終その場にいたんだぞ。」
スカジ
「そんなことどうでも良いわ。私の屋敷から、あんたに呪いの言葉をかけてやるよ。」
ロキ
「あーあ、いつからそんなに冷たくなったんだ。俺とお前はベッドで桃色遊戯をした仲じゃないか。」
トールの妻シフが進み出てロキのために酒を注いだ。
シフ
「ようこそロキ。どうぞ蜜酒がそそがれた杯をお受けください。私だけにはその毒舌を向けないでくださいね。」
ロキ
「もしあんたが貞節な人なら、見逃しても良いんだけどね。でもおあいにく様。俺はトールの妻と通じた相手を知ってるぜ。そう答えはロキさ。」
シフはあまりのショックで何もいえなかった。しかし、どこからか激しい物音が聞こえた。
ベイラ
「山が震えています。きっとフロールリジ(トール)が帰られるのよ。ああ良かったわ。」
ロキ
「ちっ、あの単純馬鹿が戻るのか。こりゃあ厄介なことになるぞ。ベイラ、お前のような奴がいること自体、場が汚れるんだよ。身分低いくせによぉ。」
そしてついにトールが扉を破り飛び込んできた。 ガッシャーーーーン!!
トール
「この悪党め、俺がいないのを良いことにさんざん悪さしおって。ミョルニルでお前の骨と肉を砕いてやる。」
ロキ
「威勢だけは良いな。だがフェンリルと戦うときは、そうはいかないぞ。フェンリルはお前の父オーディンを丸呑みするんだから。」
トール
「黙れ、悪党。さもないとミョルニルでおまえの口を封じてやるぞ。フルングニルを殺したミョルニルが、お前の体をバラバラにするぞ。」
ロキ
「おんなじことばっかりしゃべってやんの。そんな脅しの言葉なんて全然怖くないぞ。お前、スクリューミルの袋を開けられず、空腹に苦しんだことがあったよな。意外と弱々しいんじゃないの、英雄のトールさんがよぉ。」
トール
「黙れ、悪党。さもないとミョルニルでおまえの口を封じてやるぞ。俺はもう限界だ。フルングニルを殺したミョルニルが、お前を死者の国に送り届けるであろう。」
ロキ
「ついにマジギレか。これはやばいぞ。俺は神々に言いたいことを言ったが、そろそろおひらきにしよう。エーギル、もう宴会を開く必要は無い。いずれこの館は全焼し、お前の背中にも火がつくからな。」
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