2-6 CIE表色系

CIE表色系は、その名のとおりCIE(国際照明委員会)が定めた表色系です。 混色系の一種で、色光の混合比によって、色を表すシステムです。この表色系 のすばらしい点は、光の色(光源色)も数字で表すことができる点です。これまで 話した、マンセル,オストワルト,PCCSは、物体色は記号で表せるが、 光源色は表すことができません。

またCIEは、色表示の正確性もトップクラスで、マンセルやオストワルトより、 はるかに精度が高いです。そのため、工業的・定量的な応用には、このシステムが もっぱら用いられています。 

■ RGB表色系

CIEは最初にRGB表色系を作りました。(代表はGuildとWright) RGB表色系とは、実在する光の三原色の混合比によって、色を表すシ ステムです。つまりCIEは加法混色によるカラーシステムを作ろ うとしたのです。

加法混色は、赤の光、緑の光、青の光の混合比によって、色を作ります。 それぞれの色光は、R,G,Bと表記します。このR,G,Bを三つひっくるめて、 原刺激(色刺激,三刺激,三原色)と呼びます。

それぞれの原刺激は、Rは700nm,Gは546.1nm,Bは435.8nmの スペクトルとしました。これらのスペクトルを三原色の代表選 手にしたのです。

「やったーこれで色を表すシステムができる。」と思ったのはつかの間。 実験してみたところ、思わぬハプニングがあったのです。なんと三原色の 光の混合では作れない色があったのです。例えばあざやなシアンは、 青い光と緑の光があれば作れるはずなのですが、実際にはどのように割合を 変えても作ることはできませんでした。

■ XYZ表色系

そこでXYZ表色系の登場です。XYZ表色系は、原刺激R,G,Bを数学的な手法で いじって、そのいじった原刺激(X,Y,Z)を用いて、色を表すシステ ムです。X,Y,Zを用いるので、XYZ表色系と呼ばれるのです。またR,G,B は、実際に存在するスペクトルなので、True Colorと呼ばれます。それに 対して、X,Y,Zは、虚色(False color)と呼ばれます。(R,G,Bを 数学的な手法で変換したものなので、もはやその色は実際にある色ではない。) 虚色のプロフィールを書くと下のようになります。

X :赤の量。ただし明度は持たない。
Y :緑の量。唯一明度を持つ。
Z :青の量。ただし明度は持たない。

ポイントはYは明度をもっていることです。このYを視感反射率と呼びます。 XとZは明度を持たない色です。つまりYの値を示すことによって、 表す色の明度が分かるのです。「なんでYが、 緑の量を表しながら明度も表せるのか。」「どんな数学的手段でXYZを作ったのか。」という 説明は、ものすごく専門的になるので、ここではカットします。(てゆーか、俺も 満足に説明できない。)

RGB表色系では表現できなかった色があったのですが、XYZ表色系によって、 全ての色をX,Y,Zで、表現することができるようになったのです。

■ Yxy表色系

次にYxy表色系についてです。Yxy表色系 は根本的にはXYZ表色系と同じです。実用的には こちらが用いられています。XYZ表色系と言ったら、 この表色系を指すことも多々あります。

XYZをグラフで示そうとすると、XとYとZの三つの軸が必要となります。 つまり三次元になるのです。人間は三次元には弱いです。(空間図形が苦手だった人も いたのでは。)そのため三次元のグラフだと扱うのにちょっと不便なので、 なんとか平面で表現できないかという考えから生まれたのが、Yxy表色系 です。

まず三刺激X,Y,Zを下の式で表します。xとyと zは、小文字であることに注目して下さい。

x=X/(X+Y+Z)
y=Y/(X+Y+Z)
z=Z/(X+Y+Z)

x + y + z = 1

このx,y,zを色度座標と呼びます。式により、xとyが決まると、 残りのzも自動的に決まります。

xを横軸に、yを縦軸にとると下のようなグラフになり、これを 色度図と呼びます。

色度図において、視感反射率Yは一定です。この図に載っ ている色は、視感反射率がみんな同じなのです。

xの値が大きいと赤みが、yの値が大きくなると、 緑みが強くなります。またzの値が大きくなると青みが強く なります。(zの値を大きくするには、xとyの値が小さければ良い。)

色をYxy値で表しすときは、色度座標x,yと視感反射率Yの三属性を示します。

また(0.3,0.3)は白色なので、白色点と呼ばれます。白色点 から近い色は彩度が小さく、遠い色は彩度が大きいです。外側に 行けば行くほど鮮やかな色になります。

色相:座標によって決定。xが大きいと赤成分が多く、y成分が 大きいと緑の成分が多くなる。
彩度:白色点から離れれば離れるほど高い
明度:一定

純紫軌跡:上図の紫の線を指します。ここにある色は、スペクトル(単色光) では全く存在しない色(紫〜赤紫)です。スペクトルの混色によって作 れる色です。たとえば紫は、赤と青のスペクトルを混ぜることにより作れます。

スペクトル軌跡:上図の青の線をスペクトル軌跡と呼びます。純紫軌跡 とは反対に、スペクトルとして存在する色が並んでいます。つまりスペクトルの色は、 色度図のもっとも外側に位置しているのです。白色点から最も距離が離れているので、 スペクトルは非常に彩度が高い色であることが分かります。

■ マンセル表示から色度座標への変換

マンセル表色系とXYZ表色系はJISで採用されており、その二つの値は 互換性があります。つまりマンセル表色系の値から、XYZ表色系の値 に変換することができるのです。もちろん逆も成立します。

余談ですが視感反射率Yから、マンセル明度Vを割り出す式(自作)は下のよう になります。ただ俺が考えた経験式なので、精度は悪いです。(有効数字 一桁)

Y=V(V-1)

これ色彩検定の一級二次試験で結構使えます。視感反射率と明度の値を やっきになって丸暗記している人を見ていると、俺もかなり つらくなります。ちなみにこれ、色彩検定のテキストや解説にも 全く載っていません。問題集でも俺が見る限りではありません。

■ 色再現の限界

下の図は、色光の三原色と色料の三原色を色度図にプロットしたものです。 シアン、マゼンタ、イエローに注目すると、いくら色料の三原色でも、 絵の具の彩度は、光の彩度に比べて、かなり低いことが分かります。 つまり光で再現できる色の範囲は、絵の具(インクや塗料も)で再現できる色の範囲 に比べて、広いのです。

色再現の範囲は、色材によっても違います。大小関係を示すと下のようになり ます。将来、新塗料,新インクがができれば、色再現の範囲はさらに広がります。

光 > カラーフィルム > 印刷インク > 塗料,絵の具

■ RGBとXYZ

XYZ系に生まれ変わったからといって、RGB系が無駄になった わけではありません。RGB系は、実在する色光を使って 操作することができるので、その考えは今でも生きており 、照明の色やカラーテレビ、こうして今あなたが使っているパ ソコンの画面の色などの混合割合を計算したり、表示したり するのに、RGB混色の概念や記号が様々な形で 応用されています。

参考までにRGB系とXYZ系との間の換算式は 下のようになります。

X=2.7689R+1.7517G+1.1302B
Y=R+4.5907G+0.0601B
Z=0.0565G+5.5943B

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