1-5 照明

■ 照明の重要性

カラーコーディネートをするとき、照明を無視する事は できません。照明によって、色の見え方が異なるからです。 例えば白熱灯は、蛍光灯に比べて赤色の光が多く、暖かい イメージを与えます。レストランで白熱灯が多いのは、 料理を美味しく見せるためです。

光には、太陽光のような自然光と、白熱灯や蛍光灯の ような人工光があります。人工光は他にろうそくの光や石油 ランプなどもあります。(今は殆ど使われないけど)

様々な光源のもとで、色はどのように見えるのでしょうか? 買い物に行ったとします。海鮮コーナーで、刺身がおいしそう に見えたので、それを買いました。「今日の夕飯は刺身ね」と 思いながら帰り、家に着き刺身を見たとき、驚きました。家に 帰ったときの刺身の色が、スーパーで見ていた時の色と違っ ていたのです。これにはがっかりしました。

照明の違いが原因です。スーパーの海鮮コーナーで は、赤色光が多く出る光源(白熱灯)を使っています。刺身の 赤みが強調され、おいしそうに見えるのです。実はそれがワナ なのです。一方家庭では、蛍光灯が多いです。白熱灯は赤い光 が多く、刺身が美味しく見えます。それに対して蛍光等は青 い光が多く、刺身が冷たく見えます。このように照明の色は 物の色に大きく影響しています。

■ 光源の種類

光源にはさまざまな種類があります。光源を分類と下の図のようになります。 自然の光である太陽光を自然光源といい、人工的に作られた白熱灯などを 人工光源と言います。人工光源は、発光の方法によって、熱放射と 放電に分類されます。

光源の分類

人工光源には、熱せられた物質が光を発する「熱放射」と、ガラス管に 閉じ込められた気体に電圧をかけることによって、気体が反応して発光する 「放電」があります。熱放射の代表格が白熱灯で、放電の代表格が蛍光灯 と言えます。ロウソクやランプは熱放射によって光を発します。蛍光灯、 ナトリウムランプ(トンネルの中にある黄色いランプ)、水銀灯などは、 放電によって発光しています。

■ 色温度

光の色を表すのに色温度で表現する方法があります。完 全黒体(全ての光を吸収する仮想的な物体)を想定し、完全黒 体が熱せられて何度になったとき、どんな色になるかを理論的 に計算したのが、「色温度」という光の色を測る物差しです。

色温度が高くなると、赤→オレンジ→黄→白→青と変化 します。低い温度では長波長側の光、高い温度では短波長側 の光になります。

色温度の単位はK(ケルビン)で表します。ケルビンは絶対温度を 指します。私たちが良く使っている温度の単位は、℃ですね。(摂氏) たとえば1000Kを摂氏に換算するときは、1000から273を引きます。

セルシウス温度(℃)=絶対温度(K)−273

ロウソクの色温度は1970K、白熱灯は2800Kで、赤みがかかった光は 大体3000K以下です。色温度が高くなるに従って、オレンジ,黄色,白と変化します。 昼光の色温度は約5000Kです。7000Kを超えると青みを帯びた色になります。

蛍光灯の色温度は様々です。一口に蛍光灯と言っても、色々な種類があります。 市販されている蛍光灯には、色温度の違いにより、5種類の表示がなされています。 色温度が低い順に、L(電球色),WW(温白色),W(白色),N(昼白色),D(昼光色) の五種類の光色が分類されています。電球色の蛍光灯は、白熱灯っぽい蛍光灯です。 それぞれの色温度は大体下のようになります。

L (電球色):3000K
WW(温白色):3500K
W (白色):4000K
N (昼白色):5000K
D (昼光色):6000K

■ 演色性

同じ物体でも、照明が違うと色の見えが違うことがあります。 それは光源の分光分布が違うためです。白熱灯は赤い光が非常に多く、 物体に赤みがプラスされます。

照明された物体の色の見え方のことを「演色」 といい、 物体の色の見え方に与える光源の特性を「演色性」と言います。

演色性は、北窓採光による昼光(北窓昼光)を基準にして、北窓昼光での 色の見え方に近いほど、演色性が高いとなります。つまり自然光は演色性が高い のです。白熱灯は演色性が悪く、蛍光灯も決して良いとは言えません。 なぜなら特定の波長の光が著しく多く、自然光に比べて、 色の見えが偏るからです。

ちなみに演色性が高い照明がいい照明とは限りませんよ。 ケースバイケースです。たとえばブライダル会場やレストランは、 リッチさを演出したいので、白熱灯が向いています。鮮魚店も 魚をおいしそうに見せるために、白熱灯を使うと効果的です。 お菓子の店のように、パッケージに包まれている商品が中心の 店は、蛍光灯でもそんなに問題はありません。

演色性がすこぶる低いのが、トンネルの中にある「ナトリウムランプ」 です。ナトリウムランプの分光分布は、589nmのスペクトル(黄色 い光)があるだけです。他の波長の光は殆どありません。(ゼロに近い と言ってもいい。)このような光源は、色を見るには向いていません。 しかしナトリウムランプは、コストの割には非常に明るいので、 高速道路やトンネル,運動場などで活用されています。

1950年代、ピンクやレッド系のチークが大流行したことがありました。 理由は二つあります。一つは「蛍光灯の特性」、もう一つは「映画の再現技術」 です。

一昔前(1950年代くらい)の蛍光灯は演色性が悪く、最近の蛍光灯より、 黄色の光が多かったです。そのため肌に黄みが強調され、肌がくすんで見え る原因にもなりました。赤やピンクのチークは、くすみを隠す絶好のツールです。 赤やピンクは健康的に見せるからです。

それに当時は「スクリーンモード」と呼ばれるほど、 映画が流行しました。しかし当時の映画の再現技術は、決して良好とは言えませんでした。 肌色がピンクよりの色に見えてしまうのです。そのため、「アイドル=ピンクの肌をしている→ ピンクの肌は憧れの肌」と言う考えから、ピンクやレッドのチークが流行した と思われます。

■ メタメリズム

特定の照明で、物理的には違う色(分光分布が違う色)でも、 視覚的には同じ色に見える現象をメタメリズム(条件等色) と言います。光源が変わると違う色に見える事もあります。

ファンデーションの四原色は赤,黄,黒,白です。 絵の具でもこの四色だけで肌色が作れるはずです。 四色の比率を変化させると、様々な色の肌が出来ます。 赤,黄,黒,白の色材は、それぞれ赤酸化鉄,黄酸化鉄,黒酸化鉄 ,白色顔料が用いられることが多いです。

ただし人間の肌は、これらの色材で作られているわけではあり ません。そのため肌と同じ色のファンデーションは作れても、 分光分布までは一致させることはできません。そのため肌と ファンデーションは条件等色の関係なのです。光源が変わると、 同じ色に見えないこともあります。「照明が違う場所に行くと、 肌になじんでいたはずのファンデーションが浮いたように見える。」という 現象は、メタメリズムのせいです。

■ 色順応

光源が変化しても、目がその変化に慣れて、色みが変化しているように 感じない現象を色順応と言います。例えば、(自然光での)赤いリンゴを 白熱灯で見ると、最初はオレンジっぽく見えますが、目が慣れるにつれ て、自然光の下と同じ赤いリンゴに見えてきます。

■ 照明の標準化

ファッションやデザイン,ペンキ製造など、色と関わりが大 きい業界では、色の正確な伝達を必要とする場面が多いです。色を 正確に見比べたり、色のデータをとるとき、さまざまな照明を使 っていると、色の管理が難しくなります。照明を統一した方が、 色のデータを比較したりするとき、非常に楽です。そこで標準的な 光が必要になります。色を正確に測るときに、基準となる光を標準 の光(標準イルミナント)と言います。

CIE(国際照明委員会)は標準の光として、標準の光 A、標準の光B、標準の光C、標準の光D65を採用しました。これ らの標準の光は、分光分布(反射率曲線)で表現されています。

標準の光A:白熱灯の光。長波長の光が多く含まれている。
標準の光B:太陽の直射光。短波長の光が少ない。
標準の光C:平均的な昼光。紫外域が少ない。
標準の光D65:平均的な分布。比較的自然光に近い。

他にも補助的に用いられる光源として、補助標準の光D50、 補助標準の光D55、補助標準の光D75があります。

JIS(日本の工業規格)では、標準の光として「標 準の光A」と「標準の光D65」を採用しています。補助標準の光 として、「補助標準の光C」「補助標準の光D50」「補助標 準の光D55」「補助標準の光D75」の四種を採用しています。

標準の光は、分光分布で定めたものであり、現実にそんな光源 はありません。つまり標準の光は、「理論値」で表現されている光 なのです。この理論値をできるだけ忠実に再現した光源が、標 準光源なのです。実際に色を測るときは、標準光源が使われます 。「標準の光」と「標準光源」は、似て非なるものです。

■ その他

照明で重要な要素は色だけではありません。照明の向きや明るさ、 照らす方向なども見逃せません。

例えば白熱灯は、照らす方向がある程度決まっています。 ロウソクもそうです。このような性質を指向性と言いますが、 指向性がある照明は、物を立体的に見せる効果があります。 蛍光灯は全方向を照らします。このような性質を拡散性と 言いますが、拡散性がある照明は、ものを平面的に見せます。

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