環境と色彩│色彩学講座

私たちは、生活の中で気づかないうちに色の 恩恵を受けています。例えば水道の蛇口は、温水と冷 水を区別するために、暖色と寒色が使われています。 電車路線の案内板も色を頼りに見ていますし、 信号も色によって取るべき行動が分かります。

このように私たちの身の回りでは、色の効果を利用して、 快適性や安全性を高めるといったことがなされています。 ここでは私たちを取り巻く環境でどのように色が 活用されているかを見ます。

■ 見やすくする。読みやすくする。

標識や道路の白線は、見やすくする必要があります。見にくいと せっかくの標識が台無しです。それでは見やすくするにはどうすれば いいのでしょう。

下の図を見てください。どちらの方が見やすいでしょうか。これは 一目瞭然で、左の方が見やすいはずです。同じ記号でも、色の組み合わ せによって見やすさが変わります。

色の見やすさの性質を視認性と言います。右の図は視認性が 低く、左の図は視認性が高いといえます。

色と色との明度差が大きいほど、視認性は高くなります。 明度差は重要なファクターです。色相差や彩度差も視認性に影 響を与えますが、明度差ほど重要ではありません。見やすくするには、 色と色との明度差を大きくすれば良いのです。

視認性:色の見えやすさの性質。明度差が大きいと視認性は高くなる。

視認性が高い配色の例はたくさんあります。例えば道路の白線。 ねずみ色のアスファルトと白のラインは、視認性が高く見やすいです。 また追い越し禁止のときは、明るいオレンジのラインですけど、明度差が 十分取れていて、見にくいことはないはずです。もしラインが見に くかったら(例えば黒のライン)、交通事故はもっと起るでしょう。

幼稚園児の雨具の色が黄色なのも、視認性を高めることによって、 事故を防止するためです。

視認性は色の見えやすさですが、類似した言葉として可読性・明視 性があります。可読性(明視性)は、文字や図形などの形態がハッキリ 認識できるかどうかの性質を指します。見る対象が文字の場合は可読性、 図形の場合は視認性といいます。混用しても、普段の生活ではさして 問題はありません。一応頭の隅にでもとめてください。

パワーポイントで発表するときは、可読性(視認性) に注意しなければなりません。文字と背景の色の組み合わせに よっては、見ずらくなることがあるからです。 文字と背景の明度差に注意しましょう。

■ 目立たせる

看板や安全標識は目立つ必要があります。そのため誘目性 (目を引き付ける性質)の高い色を使う必要があります。 赤やオレンジのような暖色系は誘目性が高く、青や紫のような 寒色系は誘目性が低いです。 あと彩度が高い色の方が、誘目性は高くなります。 鮮やかな赤は最も誘目性が高いです。

郵便ポストの赤、「止まれ」の標識、信号の赤、踏み切りの赤 などは非常に目立ちます。赤は店の看板や広告などでも大変良く 使われていますね。

誘目性と視認性を両方利用している例としては、点字ブロックがあります。 点字ブロックは大抵黄色です。理由は二つあります。「見やすくするため」「 自転車を置くなどの妨害行為をさせないため」の二つです。黄色は結構目立ちます。 人間は目立つ場所に自転車を置くことは中々出来ません。もし点字ブロックが 目立たない色(例えばベージュ)なら、妨害行為が起る確率は格段に上がるでしょう。

「赤を使えばいいじゃない。」と思われる方もいるかもしれません。 確かに黄色よりも目立ち、誘目性は高まります。しかし点字ブロック(赤)と アスファルト(灰色)の明度差が小さくなり、視認性が確保出来ません。 それで明度が大きく、比較的目立つ黄色が点字ブロックの色として 選ばれたのです。

■ 区別を付ける

トイレの男女の区別、運動会の赤組と白組、パソコンのケーブルの区別、電車の路線案内図 などは、色の違い(識別性)を利用しています。このように色の違いによっ て、物事を区別することは大変良くあります。

もしトイレの男性マークを赤色にして、女性マークを青色にしたらどうなるでしょう。 間違えて入ってしまう確率が大きくなると思われます。

■ 心理的な影響を与える

「色の見え方」や「色とイメージ」で述べたように、色は心理的な 影響を与えます。例えば赤なら熱いイメージがありますし、青なら寒 いイメージがあります。

暖色は興奮感を与えるので、家族の団らんの場やダイニングルーム などに取り入れると、楽しい雰囲気を作ることが出来ます。逆に寒色は 沈静するイメージを与えるので、勉強部屋などに最適です。ただし使 い方を間違えると、暖色はイライラ感を与えますし、寒色は気分が暗 くなります。

安定感も重要な要素です。床→壁→天井の順に明度を高くすると、 安定感のある配色になります。もしこれを逆にすると、 上から押しつぶされている感じがし、重苦しいです。 明るい色は気分を明るくし、暗い色は気分を暗くします。 暗い色を多用しすぎると、高級感を与えることもありますが、 重々しい雰囲気になります。

彩度が高い色を大面積に使うと、刺激が強く疲れてしまいます。 長時間居ることが多いオフィスや住宅では、高彩度の色を大面積 に使うのは避けたほうが良いでしょう。オフホワイトやベージュのような 刺激の少ない色がお勧めです。高彩度の色は、アクセントカラーとして、 小面積(クッション、植物、額縁の絵など)に用いると効果的です。

■ 情報を伝達する

色には様々な情報があります。たとえば信号は 「赤は止まれ、黄色は注意、青は進め」という意味があり、 色には情報伝達する役割があります。

JIS規格では「安全色彩」を定めています。高度な危険の場合は「赤」 、注意の場合は「黄」、放射線施設ありの場合は「赤紫」など、伝えた い情報によって使う色が規定されています。


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