化粧史

明治以降、開国に伴って、洋風のスタイルが日本に入り込みました。 それは服装や化粧も決して例外ではありません。男性の場合、軍服や 制服の登場によって、比較的簡単に洋装化が進んだが、女性の場合は 華族を除いて、大正期まで待たなければなりませんでした。化粧の 場合も同じで、すぐに皆が洋化粧を取り入れたわけ ではありませんでした。戦前までは和化粧が主流で、洋化粧が 流行ったのは、そんなに昔のことではなく、戦後になってからです。

■ 近代以前の化粧

江戸時代の化粧は、赤,白,黒の三色で代表できます。

: 赤は口紅であり、当時は紅花から赤を取り出していました。 「紅一匁金一匁」といわれるように、紅花は非常に高価でした。 濃く塗ると玉虫色に光るので、質実剛健をキーワードとする武家 の間では、薄く塗るのがベターでした。濃い紅は贅沢の象徴でも ありました。

:白は「白粉」で、鉛から作った鉛白が主流でした。鉛白は 毒性があります。しかし明治に入るまで、ずっと使われていました。 (こう考えると女性の執念は恐ろしい。)白粉に紅を混ぜた「紅入り 白粉」もあり、今で言うチークの役割を果たしていました。

:黒は眉化粧とお歯黒です。お歯黒は平安時代から続く風習で、 江戸時代は女性が結婚するときに、歯を染め始めるのが通例でした。 しかし明治時代以降、お歯黒は諸外国にはない野蛮な風習として 受け取られ、華族を中心に、少しづつではあるが、消えていった。

■ 明治時代→第二次世界大戦

1.ファンデーション

明治以降の化粧品における大きな変化は、白粉が 白い粉から肌色に変わったことです。それまでは紅入り 白粉以外は、白色の白粉でありました。ちなみに当時は肌色とは 呼ばず、「肉色」と呼ばれていました。  また鉛白の毒性が社会問題になったのは、明治二十年代 になってからであり、徐々に鉛が含まれない白粉に変化し、 昭和10年には鉛白の使用と販売が全面禁止になりました。

2. アイシャドー

明治以降、日本人は欧米人に比べて、目がはれぼったい ことに気づきました。その結果、目の凹凸感、立体感を意識 するようになり、アイシャドーが徐々に広がりました。

昭和初めになると、バンビ目が望ましいと言う記事 が登場し、目頭に紅を目立たない程度に塗り、まつげに 墨を入れる方法が紹介されました。

当時、アイシャドーをよく使う人は一部であり 、一般人に浸透するようになったのは 1960年代になってからです。

3. 紅化粧

明治時代、口紅は練口紅や水口紅が用いられました。 大正以降、頬紅やリップスティックが用いられるようにな り、大正7年に国産のリップスティックが販売されるようになりました。 当時は口紅は点す(さす)ものであり、 塗るという意識になったのは、戦後しばらくしてからです。

■ 1940年代、1950年代

1.ピンク化粧の流行

1950年代は「スクリーンモード」の時代であり、映画が社会に及ぼす 影響は非常に大きかったです。これはファッションも決して例外では ありませんでした。当時の映画の技術はまだ未熟で、肌色が薄いピンクに 見えました。しだいにこれが、あこがれの対象になり、ピンク化粧を 流行らせる引き金になりました。

ピンク流行の理由は、映画以外に、 蛍光灯の普及があります。当時の蛍光灯は、演色性が決して良くはなく、 黄色や青の光が多かったです。そのため肌がくすんで見え、健康的には 見えませんでした。そこで少しでも健康的に見せるために、血色が良く 見えるピンク系が好まれるようになったのです。

2. アイメークの登場

1950年代半ばになると、アイメークが注目されました。この時は、 アイシャドーは目の欠点のカバーや夜のメーキャップに使われるのが、 主流でした。

3. カリプソメークの流行

1950年代後半になると、太陽族,ロカビリー族などの若者文化が登場 しはじめ、音楽が流行を引っ張るようになりました。音楽がファッションに影響を 与え始めたのです。大流行したメーキャップに「カリプソメーク」がありました。  歌手の浜村美智子が「バナナボート」でデビューしたときのメーキャップより 名づけられました。(変な妄想をするのは俺だけか)当時の雑誌によると「顔全体を熱帯女性風に褐色でぼかし、チークは 一切つけずに、眉と目に派手なアクセントをつけ、唇の輪郭をくっきりと描く 化粧方」と説明されています。(「若い女性」1957年8月号より)

また口紅の色もベージュや白,黒までも登場し始め、「口紅赤一辺倒主義」は 徐々に崩れ始めました。

■ 1960年代

1.ブラッシュタイプのチークの登場

1964年になると、ブラシでさっとはくブラッシュタイプのチークが 登場しました。手を使わず、自然な仕上がりで、メーキャップ初心者でも 気軽に使えたため、あっという間に広がりました。そして現在でも 生きている方法です。これまでのチークは、クリーム状や練り状でした。

2.口紅のバリエーション

1960年にパール光沢が入っている口紅が販売されました。パールは、 その名のとおり真珠みたいな光沢です。このことによって口紅は、 色だけでなく、色の持っている質感にも注目されました。また1960年後半になると、 口紅のバリエーションが広がりました。アーモンドやベージュなど、色相が 増えたり、パール感を持たせたものや、金色や銀色の 金属光沢を加えたもの、透明感のあるもの、マットタイプのもの、さっぱりしたもの、 べったりしたものなど、口紅も複雑に細分化されました。

■ 1970年代

1.アイメークの活性化

70年代の化粧の特徴は、アイメークにあります。これまでのアイメークは、 若い女性が中心でしたが、70年代に入ると30〜40代の女性にまで広がりました。

2.ナチュラルメーキャップ

公害問題、オイルショック、大気汚染(光化学スモッグなど)など 、民衆の環境問題の関心が高まりました。それを背景に「自然志向」 「ナチュラル」がキーワードになり、ファッションやメーキャップ も例外ではありませんでした。化粧品を使いながら、自然な顔に見せる 「ナチュラルメーキャップ」が活発化し、それは現在でも生きています。 しかし肌を自然に見せるには、自分の肌の特性を知る必要があります。 またメーキャップのテクニックも要求されます。雑誌でも「この化粧品を 使うとこんな効果がある。」「このタイプの肌にはこのファンデーション が向いている。」などかなり詳しい情報が掲載されるようになりました。 人工的でなく、自然的な顔は、自分の持ち味を生かすことに通じ、「素顔」 が市民権を少しづつではありますが得始めました。口紅も「アースカラー」 に通じる茶色(ブラウン系)が多く登場し、支持されました。

■ 1980年代

1980年代半ばを過ぎると、従来的な社会的な枠組みが崩壊し始めました。 男らしさ、女らしさなどが不鮮明になり始めたのです。それを背景に 「ファッション=女性、化粧=女性」などの等式もかなり怪しくなりました。 (今ならこの等式間違っているよな)1980年半ばには、「メンズノンノ」 をはじめとする、男性向けのファッション誌もたくさん登場しました。 「大衆(肩書き)から個人へ」、この変化がポイントです。時代としては、 個人のレベルまで細分化され、さらに一人十色といわれるほどに、自分の中でTPO による使い分けが要求される時代になりました。

1980年代:個人化 → TPOによる使い分けが要求される。

メーキャップの場合、常にナチュラルなメークだけではなく、 アフターファイブは普段とは異なるメーキャップをして楽しむような、使い分けが できる人が現れ始めました。「パーティーメーク」「勝負メーク」「晴れの日メーク」 「きれいなお姉さんメーク」などの言葉は、TPOによってメーキャップを使い分けている 例です。これに伴って、色に関心を持つ人も多くなりました。「 ロマンチックなイメージにしたいから、この色にしたらどうかな?」と考えるよ うになるには、TPOを意識しないと(⇔流行に流されるだけでは)、かなり 難しいものです。パーソナルカラーという、肌の色や 目の色,顔立ちなどで、似合う色を割り出すコンサル ティングが日本に登場し始めたのも1980年代です。(ただ問題も多かったけど。)

またこの80年代真ん中以降、小さな顔が流行しました。 これは、メーキャップに影響を与えました。(例:どのような チークやファンデーションを使えば、小さな顔に見せれるんだろうか。) 後に「小顔」と呼ばれる現象です。また平均身長が高くなったのが背景に、 欧米ファッションを着こなせる人が増え始めました。(特に女性)

■ 1990年代

1990年代は「茶髪」が流行し始めました。髪を染める人は大幅に増加し 「黒髪絶対主義」は崩れました。初期は反対していた年配の人も、今 は「白髪染め」を頻繁に行っています。意外と早く社会に受け入 れられたといえます。

また「オゾン層の破壊」を背景に、紫外線をカットする化粧品が新しい マーケットになりました。1990年〜1990年代中盤までは、白い肌志向が 続きました。しかし1990年代後半、流行の肌色は黒に逆転しました。俗に言う「ガングロ」 です。安室奈美恵やナオミ・キャンベルの影響とも、黒人系の音楽の影響とも いえます。ちなみにガングロの語源は「ガンガン黒くする」です。またガングロ系ファッション雑誌として、 有名なのは「egg」です。(ちなみに今も刊行している。) 2000年を過ぎると、浜崎あゆみの影響で白い肌が流行しました。 もっとも浜崎あゆみだけではないのですが。これらによって、ガングロ少女は かなり減少しました。

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