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２ オーディンとルーン

1ではバイキングの生活について話しました。ここではルーンと 北欧神話（バイキングを主軸に信じられていた神話）の関係を 話したいと思います。北欧神話ではオー ディンがルーン文字の発明者だと言われています。 「エッダ」の「高きものの言葉」の一節に、オーディンが自らの 身を犠牲にして、ルーンを掴みあげた姿が描かれています。（ 「エッダ」とは、北欧の神々や伝説を語った詩集の事。他に有 名なものとして「サガ」がある。）

私は知っている、私が
九日九夜にわたって
風吹きすさぶ樹に吊り下がり
槍に傷つき、私自身が
オーディン、つまり私自身に
私をいけにえとして
それがいかなる根から発しているのか
知る人もいない
パンも角杯も 恵まれぬまま
私は下をうかがう
私はルーンを掴みあげた
うめきつつつかみ
それから大地に落ちた そして、私は書き始めた
実りが増えて来て、私の知恵も増えて来た
一つの言葉が言葉を生み
それが行いも呼んだ
そして一つの行いが多くの行いを呼んだ

北欧神話の中でも、魔法と知識（知恵ではない）の力に恵まれた 、オーディンが世界樹に吊り下がり、自分の身を傷つけながらも得た のが、神聖文字ルーンだったというわけです。

ここで、タロットを知っている方は「１ ２ 吊るされた男」とそっくりなのにお気づきでしょう。現 に北欧神話をモチーフにしているタロットデッキには、オーディン のこの姿が「１２ 吊るされた男」に描かれています。タロットと ルーンは直接関係ないはずなんですが、なんか共通している部分も ある感がします。（いくつかタロットと似ている兆候が見られる。 キリスト教の影響なのか・・。無理にタロットと結び付けただけ なのか。）

オーディンにはいろいろな側面があります。 戦い、魔法、詩、死、女、貿易などなど。彼は、複数の顔を 持っています。オーディンだけじゃなくて他の神にもいえます。だから 北欧神話で「愛の神」「豊穣の神」などと、ギリシャ神話のように 神の役割を簡単に決め付けるのは厳禁です。

オーディンはナイトや貴族を 中心に、多くの人に崇められました。アングロサクソ ン系の王家の人は、「自分達の先祖はオ ーディンだ。」と主張して誇りに思ったくらいですか ら。オーディンは神なので人間の子は産めませんが、このよう な出産神話や伝説は、古代社会では結構あったようです。

一方、オーディンと負けないくらい信仰されていたのが 、トールです。トールはオーディンと正反対で、比較的粗野で 単純な性格の持ち主でした。オーディンが戦 いの庇護者だとしたら、トールは戦士そのものだといえます 。バイキングにとっては、理想像だとされていたよ うです。トールの闘志や勇気とかが。またトールは豊饒の 神でもあり、農民や漁民を中 心に信仰されていました。

他にも、フレイやフレイヤ、バルドル、チュール、 ロキなど沢山の神が、北欧の民族などに崇められました。 （広く言えば、昔はゲルマン系民族のほとんどが信仰し ていた。）同じ北欧神話（オーディン教という。）を信じ ている人でも、オーディンをメインに信じるか、トールを メインに信じるかによって、下の表のように、２つに分 類されます。

オーディン信仰:　貴族、ナイトなどに信仰者が多かった。

トール信仰:　農民、漁民などに信仰者が多かった。

ここで注意したい事があります。トール信仰の人も 、オーディンは重要な存在だし、オーディン信仰の人も 、トールは重要な存在です。（オーディンだけが絶対だ 。トールだけが絶対だ。という訳ではない。）一神教とは 違い多神教は、他の神や他の 宗教に寛容な面をもっています。日本も、結婚 式は教会でする人もいますよね。クリスマスも平気でやって いますしね。仏教関係の幼稚園やお寺だって、クリス マス会はありますし。

オーディン教やミトラ教、ゾロアスター教のように古代 に強く信仰されていて、現代は衰退している宗教の事を総 称して古代宗教（または原始宗教）と言います。

衰退した理由として、キリスト教やイスラム教の ような一神教の普及が大きな原因になったと考えられま す。一神教は多神教と違い、自分以外の宗教を受け入れ る事は出来ませんからね。（ただ信仰の度合いにもよるけど。）

最後にひとつ、エッダの詩「巫女の予言」の一部を紹介し て、この章を終わりたいと思います。北欧神話の世界が出来る 前の様子が描かれた詩です。

いまだ何もない大昔には砂もなければ 海もなく
冷たい波もなかった
大地もなければ天もなく
ただギンヌンガの裂け目が大きく口を開いているだけで
いずこにも草一本なかった

はじめは、何一つなかたようです。ただひとつ、ギンヌン ガカップ（ギアガの大穴）があっただけでした。ギンヌンガカ ップの中で（極東の氷と極南の火花が衝突しあって生命が誕生し たといわれています。（詳しい事は、北欧神話のコーナー で）