18 ヒュミル訪問

トールは、車ものらず、馬にものらず、同伴者もなしで一人旅に行った。そして夕方頃に、ヒュミルという巨人の家の戸口をたたいて、宿をとった。翌朝、ヒュミルは・・・

ヒュミル
  「さぁてと、そろそろ釣りに行こうかな。用意も済んだし。」

トール
  「ちょっと待ってくれ。俺も一緒に行きたいな。」

ヒュミル
  「お前のような青二才は必要ない。沖まで行くんだぜ。お前なんか、簡単に凍死するぞ。」

トール
  「なめんなよ!!弱音は吐かんぞ。」

トールは、もう少しでキレそうだった。しかし珍しいことに、トールは自分をおさえた。

トール
  「餌は何を使うんだ。」

ヒュミル
  「自分で用意しろ。」

トールは、ヒュミルが飼っている牛の群れのところに行くと、一番大きな牛の頭をもぎとって、浜辺に戻った。ヒュミルは、ボートを水に浮かべていた。こうして二人は、沖に行くためにボートを漕いだ。(実は結構お人よし)

船はスムーズに進んだ。やがて、ヒュミルがいつもフリンダー(地獄ヒラメ)を釣るところまで来ると、トールは「せっかくだから、もっと沖まで行こう。」と言った。そこで二人は、もっともっとボートを漕いだ。しかし、ヒュミルはとうとう言った。―――これ以上は危ない。そうすると、大蛇ヨルムンガルドが現れるぞと。

それでもトールはボートを漕いだ。ヒュミルは不安そうな表情。そう、トールはヨルムンガルドに会いたかったのだ。トールは、釣り糸を出した。ダダの釣り糸ではなく、太くて丈夫な鋼の糸であった。釣り針もすごく丈夫だ。トールは釣り針に「牛の頭」をセットして、海に投げ込んだ。

大蛇ヨルムンガルドは簡単に引っかかった。しかし釣り針はアゴに刺さり、大蛇は大暴れした。大蛇の衝撃により、トールの両拳が舟縁にぶつかった。トールは、足を猛烈に突っ張ると、両足が舟板を踏み破って、トールの靴底は海底についた。(めちゃくちゃ背が高いな。すげーぞ。)ついに彼は、舟の近くまで大蛇を引っ張りあげた。

ヨルムンガルドは反撃した。なんとトールに猛毒を吹き付けたのだ!!睨みかたも半端じゃない。巨人ヒュミルは、顔色を変え、真っ青になり、恐怖の沼にはまっていた。

トールがミョルニルを空中に振り上げた瞬間、ヒュミルはナイフで釣り糸を切ったので、大蛇は海に沈んだ。トールはうしろからミョルニルを大蛇に投げつけた。人の話によると、ミョルニルは大蛇の頭に直撃したらしい。しかし、大蛇はまだ生きていて、大洋中に生息している。

大蛇殺しのチャンスを失ったトールは、ヒュミルを殺してしまった。(でも、ヒュミルが糸を切った気持ちは良く分かるな。私だってそうするかも。)死因は「溺死」。トールは海を歩いて陸地に戻った。

■ 補足

トールとヒュミルの話は、二種類あります。「古エッダバージョン」と 「スノリのエッダバージョン」の二つです。トールとヒュミルとヨルム ンガルドが登場する点では共通していますが、全然違うストーリーです 。(古エッダバージョンでは、エーギルとチュールも登場する。)

ここでは「スノリのエッダバージョン」を紹介しています。「ウ トガルドの遠征」は「スノリのエッダ」にしか登場しない作品です。 「スノリのエッダ」は、たくさんの神話や物語を一つにまとめたもの ですから、物語に一貫性があります。(しかも、スノリ一人で。)その ため、非常に読みやすいです。それに対して「古エッダ」は、たくさん の詩の集合体で、各作品について作者も年代もバラバラです。一貫性は ほとんどありません。

個人的には「古エッダバージョン」の方が好きですが、物語に 少しでも一貫性を持たせたほうがとっつきやすいので、「スノリのエ ッダバージョン」を採用しました。

■ 古エッダバージョン

神々は飲み物が欲しかった。彼らは狩りで疲れていたのだ。 運動の後にはビールが欲しい・・・。小枝を握ってくじをつく り、くじ占いをするとエーギルの名が出た。海神エーギルは 、オーディンの血をひいていなく巨人であった。しかしエーギ ルは神とみなされている。(そういえばロキもそうだ。)

トールはエーギルにこう言った。

「おいエーギル、いくら飲んでもなくならないくらいの酒を造ってくれ。」

この不躾な言葉にエーギルはキレた。(当たり前だ)

「ああいいとも。物凄く大きな鍋が手に入ったら、いくらでも醸造してやるぞ。」

たいへん!!神々の酒量に見合った鍋なんて、見たことも聞いたこ ともない。 みんなエーギルの言葉を聞いてとまどった。

チュール「父のヒュミルなら持っているぞ。」

トール 「おぉ、そっか。それなら話が早い。早速行こうぜ。」

チュール 「でも巨人は神々の敵だぜ。しかし父は、エリヴァーガ ル(荒れ狂う波)の東にすんでいるんだ。それに父は頑固な性格だからな・・・。」

トール 「大丈夫かな?」

チュール 「策を弄せば、きっとうまく行くよ。」

トール&チュールの旅が始まった。ヒュミルの館は海辺にある 高い山の頂上にある。ヒュミルの館に着き、一番最初に会ったの が祖母であった。 チュールは祖母に嫌われいるのを感じた。祖母 は900の頭を持っていた。(どんな姿なんだ。)

この後チュールの母が、麦酒を運んできた。彼女は彼らを 暖かく迎えてくれた。

チュールの母 「良かったーあの人がいなくて。父は とっても無愛想な性格なの。円柱の後ろに隠れると良いわ。」

 トール&チュールは円柱に隠れた。夜遅くヒュミルは狩り から戻ってきた。彼の姿は良いとは言えず、髭にはつららが出来 ていた。

チュールの母 「ヒュミルお帰り。息子チュールが帰っ てきたの。しかも彼の戦友も一緒で、彼の名はヴォーエル(トー ル)というの。」

ヒュミルはちょっとも喜ばず、二人を見つけ、物凄く にらみつけた。しかもヒュミルは二人に「眼光ビーム」を放 った。梁は真っ二つに折れ、円柱はバラバラに壊れ、梁に吊 るしてあった八つの釜が次々と落ちた。七つの釜は壊れ、鍛 えてあった一つの釜は無事であった。

あたりは静まり返った・・・・。

ヒュミルは無愛想な顔で二人をもてなした。三頭の 牛が引き出され、ヒュミルは召使にそれをすぐ料理してこ いと言いつけた。料理が出来ると、トールは牛を二頭分平ら げてしまった。この大食漢ぶりにはヒュミルも驚いた。

ヒュミル「食事がいくらあっても足らないな。明日は漁に行こう。」

トール「いいだろう。ところで餌はどこにある?」

ヒュミル「牧場に行けばたくさんある。牛の糞のひとつ やふたつなら、いっぱいあるぞ。」

トールは牛の糞なんて完全無視して、立派な雄牛の首を もぎ取って、それを餌とした。それを知ったヒュミルはめち ゃくちゃ驚いた。

航海が始まった。トールたちはどんどん沖に行った。ヒ ュミルは釣りが大得意で、あっというまに鯨を二頭釣り上げた 。つぎにトールは牛の頭を釣り針にセットして、海に放り投げた。

なんとヨルムンガルドが牛の頭に食いついたのだ。大き い釣り針が蛇のあごに突き刺さる。蛇はめちゃくちゃ体を うねらせ大暴れし、激しい津波が起こった。

トールとヨルムンガルドの大格闘。ヒュミルは 怯えている。トールはヨルムンガルドのあごの肉を引 きちぎった。その結果蛇は海に沈んでしまった。ヒュミ ルはおびえ、オールを手にとって浜辺に戻った。

そして浜辺に着いたとき・・・

ヒュミル「船片づけ係と鯨運び係を決めよう 。おまえはどっちが良い?」

トール「・・・・」

トールは何も言わず、鯨に二頭と船一式を持ち運んでし まった。チュールの母は驚き、彼を褒め称えた。ただヒュミ ルのプライドはズタズタだった。

ヒュミル「生意気な奴め。それじゃあ勝負だ。 このガラス杯を割ることが出来たら、お前を真の男と認め てやろう。」

トールはガラス杯を思いっきり殴ったが、ガラス 杯はびくともしなかった。いくら叩いてもダメだった。

ヒュミル「お前も弱々しい男だな。」

トール「なんだと。」

チュールの母はトールに助言を与えた―――ヒュミルの 頭にぶつければ割れると。(小さな声で)

それを知ったトールは、ガラス杯をヒュミルの頭に ぶつけた。あっさり割れてしまい、ヒュミルは負けを認 めた。

トールたちは意気揚々と大きな釜を担いで、アー スガルドに向かった。途中で巨人たちの追手が来るが 、トールは自慢のミョルニルを振り、一人残らず巨 人の群れを殺した。これにより神々は、麦酒をたら ふく飲むことが出来るようになった。

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