16 ウトガルドへの遠征〜前半

ミョルニルを持ったトールは無敵に近い状態です。巨人が束になってかかっても、トールにとってはへのカッパです。しかし、このエピソードは・・・。結構長いストーリーなので、前半と後半に分けて書きます。


トールはロキと一緒に、二頭のヤギの引く戦車に乗って、巨人の国ヨーツンヘイムに行った。ちなみにヤギの名前は、タングニョーストとタングリスニルである。晩方ふたりは、ある農民のところに来て宿をとった。夕方になると、トールはヤギを殺して、皮を剥いで、山羊肉を大鍋の中に投げ込んだ。しばらく経つと、おいしい肉の匂いが漂い始めた。

トールは農民とその家族を呼んで、一緒にテーブルにつくと「さあ、ジャンジャン食べてくれ。ただ骨は絶対に痛めないようにして、全て山羊皮の上に置くように。」と言った。農民の息子はチアルフといい、娘はレスクヴァと言った。食いしん坊のチアルフは、みんなが居なくなると、山羊の腿(もも)の骨をナイフで割って、滅茶苦茶おいしい骨の髄を食べてしまった。(食べたのは1本だけ)

翌朝トールは、ミョルニルを振りかざして、山羊皮と骨を祝福した。すると山羊たちは復活したが、一頭だけ片足が折れていた。これにはトールもキレた。「誰だぁぁ!!俺の言いつけを守らなかったのはーーー。ただじゃ済まないぞ!!」トールの目は、炎のように殺気立っていた。骨が白く浮き出すほどきつくミョルニルを握り締めていた。

あまりの威圧感に農民たちは泣き叫んで「命だけは助けてください。何でもしますから。」と言った。彼らの恐怖を見ると、トールはかわいそうだと思い、チアルフとレスクヴァを召使にすることで、農民たちを許した。(トールって結構優しいかも。)

トールたちは骨折した山羊を農民の家に置き、チアルフとロスクヴァを連れて旅を続けた。そして海辺に着いたので、深い海を渡り、向こう岸に着いた。ここからは巨人の国ヨーツンヘイムである。いつ巨人に襲われるか分からない。やがて、大きな森に着き、一日中森の中を歩いたが、抜けることはできなかった。チアルフはとても足が速く、トールの荷物をかついだ。あたりが暗くなると、彼らは宿を探した。そしてラッキーなことに、大きな小屋を見つけ、そこに泊まった。

しかし、真夜中に大地震が起こり、彼らは避難場所を探していた。小屋の真ん中の右手に、小さな個室があったので、彼らはそこに逃げ込んだ。トールは、いつ巨人が来ても良いように、ミョルニルを握り締め、部屋のドアの前に座っていた。ロキとチアルフとロスクヴァは、部屋の中に入っていて怯えていた。(トールは外側。それ以外は内側。)そのとき、みんなはすざましい騒音とうなり声を聞いた。

朝、トールが外に出てみると、巨人が横になっている姿を見た。昨夜の地震は、こいつの仕業だなとトールは感づいた。巨人がいびきをかくたびに、大地が揺れていたから。「こんな奴殺してやる。」とトールは思い、力が二倍になる力帯を締めなおして、ミョルニルを握った。ところがその途端に、巨人が目をさめて、すぐにむくっと起き上がった。トールはびっくりして、ミョルニルを振り下ろせなかった。

トールは彼に名前を聞いた。巨人は答えた。「わしの名はスクリューミルと言う。お前はわしの名前を聞く必要は無い。アースガルドのトールであることは知っているから。ところでわしの手袋はどこだ?」

スクリューミルは、手を伸ばして手袋を拾った。なんと、昨夜泊まった小屋こそが、彼の手袋であった。ちなみに、夜中の音に怯えて逃げ込んだ部屋は、その手袋の親指であった。

スクリューミルは一緒に旅をしたいと言い、トールもそれに賛成した。まずはじめに朝食を食べた。巨人は自分の袋から食料を取り出して朝食を食べた。トールたちも仲間と一緒に弁当を食べた。食事が済むと巨人は言った―――荷物をバラバラに持つのは面倒くさいから一緒にしようと。みんな賛成し、巨人はトールたちの荷物を自分のリュックに入れて、口を縛ると、それを背中にかついだ。

こうしてみんな出発した。スクリューミルはみんなの先頭に立って、すごい大またで歩いた。遅れないようにその後についていくのは、足の速いチアルフでさえ苦労した。夕方、一行は大きな柏の木を見つけ、巨人は「今夜はここで泊まろう。私はもう寝る。お前たちは、勝手にリュックから食料をとって、夕食をとりたまえ。」と言った。

巨人は、大きないびきをかいて、ゴロンと寝てしまった。早速、トールたちは食事をとるために、紐ほどきにかかった。しかし、どんなに頑張っても全然紐がゆるまない。腹を立てたトールは、ミョルニルを握り締め、巨人の頭を殴った。普通の巨人なら即死だ。

しかし、彼は眠たさそうに目を開けると「木の葉がわしの頭に落ちたのかな。お前たちはまだ寝ないのか?」と言った。トールは「これから寝ようと思ったところだ」と答えた。

トールたちは、別の木の下に行ったが中々寝付けない。そりゃそうだ、腹は減ってるし、巨人のいびきはうるさいし。夜中になると彼のいびきはエスカレートした。トールは起き上がって、今度こそ殺してやると思った。

トールはミョルニルを高く持ち上げて打ち下ろした。絶対に死ぬとトールは思ったが、巨人は死ななかった。巨人は目を覚まして「頭の上にどんぐりが落ちたんだな。お前はそこで何をしている?」と言った。トールは「ちょっと目が覚めたんだ。」とごまかした。

トールは、横になった。巨人が熟睡するのを待っていた。明け方の少し前に、いびきがうるさくなったので、チャンスだと思い、満身の力をミョルニルに込めて、力いっぱいに打ち下ろした。巨人は頬をなでてこう言った。「木の枝が顔に落ちたらしいぞ。鳥の仕業だな。おートール、起きていたのか。そろそろ、支度をしよう。」と言った。

旅支度が終わるとスクリューミルはこう言った。

「もうすぐ巨人の世界だ。向こうに行くと、わしとは比べ物にならないくらい、大きな巨人に会えるぞ。わしなんて全然かわいい方だ。彼らから見れば、お前たちは小人みたいなものだ。お前たちみたいなチビが、手柄話などをすると、ウトガルド・ロキは怒ってしまうぞ。行かないほうが身のためだ。もし行きたいなら、ずんずん東を目指すがいい。わしの目的地は北にあるから、みんなとはここでお別れだ。」

スクリューミルは北に向かった。そして、トールたちは東に向かった。

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