ある日のこと、フレイがちょっとした出来心から、無断でオーディンの座に座り、世界を見渡していた。はるか遠くに、巨人ギュミールの屋敷が見えたが、それらを見回しているうちに、フレイは一人の若い女性を目にした。
その女性は超べっぴんさんで、とくに彼女の腕は輝いていたので、そのために空も海も大地も輝き渡るほどであった。フレイはその女性に一目ぼれした。何日もの間、飲むことも食うことも眠ることも出来なかった。彼のハートの鼓動は激しくなった。
このありさまに父のニヨルドは心配した。彼は召使のスキールニルに頼んだ―――フレイの様子がおかしいんだ。原因を探ってみてくれと。しぶしぶスキールニルは、フレイの屋敷に行った。
スキールニル
「あなたは最近様子がおかしいですよ。なにか、あったんですか?こんな暗い部屋に閉じこもって・・・。」
フレイ
「悩みがあまりにも大きすぎて言葉では表せないんだ。太陽は毎日顔を出すけど、その光は僕のハートの中には差し込まないのさ。」
スキールニル
「私とあなたは子供の頃からの友達で、腹を割って語り合える仲ではありませんか。何もそんなに悩みを隠さなくても・・・。」
フレイ
「実は実は・・・好きな人が出来たんだ。ゲルドという女巨人で、彼女はとてもまぶしく見えるよ。でも、彼女は巨人だ。この恋に神々や妖精は賛同してくれるか・・・心配なんだ。」(大丈夫大丈夫。ニヨルドだって巨人と結婚しているし。)
フレイ
「頼む。ゲルドの所に行って、僕のためにプロポーズしてくれ。」(おいおい、自分でやれよ。)
スキールニル
「では,魔法の光にもひるまない輝ける馬と巨人と戦える剣を下さい.」
フレイの剣といったら貴重な宝物である。フレイは、剣と馬をスキールニルに手渡してしまった。そこでスキールニルは、火の壁を乗り越え、冷たい野山を乗り越え、とうとうギュミールの屋敷に着いた。(ギュミールはゲルドの父。)この馬でなければ、おそらくギュミールの屋敷に行けなかったであろう。
ギュミールの屋敷の前には、猛犬と羊飼いが居た。スキーニルは羊飼いに向かってこう叫んだ―――どうやったら、ギュミールと話せますかと。羊飼いはそんなのは不可能であると答え返した。
館の外で騒がしい音がするのをゲルドは聞き、スキールニルを屋敷内に入れた。スキールニルは彼女に言った。「あなたがフレイのことを好きだと言ってくれるなら、11個の金の林檎を差し上げましょう。」
彼女は答えた。「私の愛は、簡単には動きませんよ。」と。スキールニルは言った。「ではこの黄金の腕輪を差し上げましょう。これはドラウプニルといい,九夜ごとに同じ腕輪を産み落とすのです」と。しかし、ゲルドの返事はNO。
彼は「好きと言え、コラァ!!」と剣で脅した。しかしゲルドは毅然とした態度だ。
最後の手段、彼はこの世のものとは思えないほどの呪いの言葉を彼女に放った。その内容は・・・
「そんなに意地を張っているなら、おまえは誰よりも醜悪な巨人になり、あらゆる生き物にお前の恥部をさらされるが良い。お前は喜びを求めようとしても、得られるものは全て涙になるのだ。お前の食うものは、お前の口の中で嫌らしいものに変わるが良い。」
さらにスキールニルは、声を高めて叫んだ。
「霧の巨人も、山の巨人も、神々も、小人もみんな聞いてくれ。俺はあらゆる喜びをこの女に禁止する。お前にために,恥辱にあふれたルーンを刻んだぞ。お前の気持ちが変わったら、ルーンをひっくり返しても良いんだぞ。」(ものすごく大人気ないなぁ)
とうとうゲルドは呪いの言葉に負け、結婚を承諾した。。その時に言った言葉は・・・。
「向こうにパーリの森がありますが、さわやかな空気が流れてますね。今から九夜過ぎたら、ニヨルドの息子に愛を捧げますわ。」(さっきと全然違うぞ。)
スキールニルは、フレイにこのことを言うとフレイは舞い上がった。そのときに言った言葉は・・・。
「一晩でも長い、二晩ならもっと長い、三晩ならもう我慢できない。あこがれの半夜の方が、一月よりも長いなぁ。」
しかし、フレイはゲルドの愛と引き換えに貴重な剣を失った。そしてラグナロク時に・・・。
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