10 フェンリルの捕縛

ロキは巨人の一族であるが、遠い昔オーディンと義兄弟の関係を結び、神々の一族になったと言われている。 彼は妻シギュンとの間に、ナリ(ナルヴィ)をもうけるが、その反面、巨人アングルホダとの間にも、狼フェンリル、大蛇ヨルムンガルド、 ヘルをもうけてしまう。(生まれた順番はフェンリル→ヨルムンガルド→ヘルの順)

神々は千里眼によって、この兄妹は神々にとって危険であろうと悟った。大きな災いが起こりそうだと神々は思った。ヘル(死の世界、極北の世界)はニブルヘイムに、ヨルムンガルドは深い海洋に投げ込んだ。このことにより、ヘルはニヴルヘイム(死の世界)のリーダーに、ヨルムンガルドは異常に成長して世界を一周するほど体長になる。しかし狼フェンリルだけは、神々はそんなに危なくないだろうと思い、飼う事にした。

しかしフェンリルは、時間と共にめちゃくちゃ大きくなり凶暴になった。フェンリルはタダの狼ではない。狼は狼でも、ものすごく大きいのだ。(イメージとして象くらいの大きさの狼)ついにフェンリルに餌をやれるのは軍神チュールだけになった。(男の中の男だー)あのオーディンも、豪傑なトールも、ロキもフレイも限界であった。

もうダメだ!!このまま野放しにしたらロクなことにならない。神々は早速会議を開いた。その結果、フェンリルを縛ることにした。フェンリルを縛るために、レージングという足枷(あしかせ)を作った。レージングはめちゃくちゃ丈夫でちょっとやそっとじゃ壊れない。しかしレージングを完成したのは良いが、どのようにフェンリルを縛るかで神々は悩んだ。議論のかいあってか、挑発作戦に乗り出した。


神々「フェンリル、お前は素晴らしい力があるらしいが、われわれに見せてくれ。」

フェンリル「どうすればいいんだ。」

神々「この足枷を装備してみてくれ。お前なら外せるはずだ。」

フェンリル「・・・・・」

神々「それともできないというのか?それでも男かよてめぇは?!」

フェンリル「なんだと、コラ。そんなの朝飯前だぜ。」


フェンリルは神々の挑発にいとも簡単に乗った。(単純だなぁ・・)足枷をつけたフェンリルは、一度突っ張ると、レージングを簡単に壊してしまった。やはりフェンリルの力は半端でなかった。

こんなことであきらめる神々ではない。今度はレージングより2倍の強度をもつドローミという足枷を作った。神々はおなじみの挑発作戦に乗り出した。


神々「フェンリル、新しい足枷を作ったぞ。今度は自信作だ。」

フェンリル「なんかクサイな。今度の足枷はもっと強いに違いない。」

神々「この足枷を壊したら、お前は漢(をとこ)だ。この世のものとは思えないほどのスーパーマンだぞ。」

フェンリル「おぉ、それじゃあやってみよう。俺はスーパーマンなるぜ!!」


警戒はされたものの、フェンリルは足枷を付けた。レージングよりは苦労はしたものの、フェンリルはドローミングを壊した。レージングもドローミングも失敗に終わってしまった。

「このままではまずいぞ。どうすればあいつを縛れるんだ?!」神々は必死に考えた。いくら相談しても、いい案が浮かばない。しかし、神の一人がこう言った―――小人の力を借りたらどうだと。

フレイの幼馴染であり召使であるスキールニルが、小人の世界に行って、小人に頑丈な紐を作らせた。その名前はグレイプニルと言い、六つのパーツから成り立っている。猫の足音、山の根、熊の腱、魚の息、鳥の唾、女の髭。だから、女は髭が生えにくいし、魚は口で呼吸しないし、猫は歩いても足音などしないし、山の下には根っこが無い。

ゲレイプニルは滑らかでやわらかい特徴がある。しかしフェンリルはそう簡単に神々の挑発に引っかからない。


フェンリル「こんな滑らかな紐をちぎったって、何の名誉にもならないよ。ましてはこんなスーパーマンな俺に。」

神々「こんな紐ぐらい簡単に切れるよ。丈夫な足枷を二つも壊したお前なら。」

フェンリル「いや、絶対に怪しい。いやな気配がする。」

神々「そんなことないって。」

フェンリル「どうも信じることが出来ない。それじゃあ、お前らの誰かが、私の口の中に片手を入れろ。もし嘘をついたら、タダではすまないぞ。」


そんなこと出来る神なんていない。みんな、ビクビクしていた。(あたりまえだな。)しかし、チュールが右手を差し出し、フェンリルの口に入れた。

フェンリルはグレイプニルに縛られた。この紐は柔らかくて延びやすいので、力めば力むほど紐は食い込んだ。あまりに滑稽なので、チュール以外の神は爆笑した。フェンリルは騙されたと思いチュールの腕は食いちぎった。このためフェンリルの捕縛は成功したが、チュールは片腕を失った。

神々は、フェンリルを大地の地下深くに押し込み、それから大岩を地中に静めた。フェンリルは大きく口を開けて神々を食いつこうとしたが、神々は狼の口の中に剣を突っ込んだ。切れ先が上あごで、柄が下あごに当たるようにした。剣がつっかえ棒になり、これによりフェンリルは口からよだれを流した。その水量は半端でなく、一本の川ができた。神々はその川をヴォーン川と呼んだ。フェンリルは、ラグナロク(神々の終末)まで横たわっているのだ。

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